派遣を学ぶ

派遣社員も知っておこう!募集条件と異なる業務内容、辞めたら失業保険はどうなる?

「募集していた労働条件が、自分の希望条件と合っていたので働いてみたら、実際には違っていた」というような経験はありませんか? 「労働条件に納得して働き始めたのに、途中から急に大きく変わった」などということも……。このような理由で退職した場合、どんな手続きをしたらよいのでしょうか。

今回、回答してくださったのは、弁護士法人新潟第一法律事務所の弁護士である五十嵐亮先生。保育園に子どもを預けて働き始めたAさんのケースを例に、法律的な側面からどのように行動すべきかを教えてもらいました。派遣で働く人も、同じようなことが起こった際の対処法として知っておくといいでしょう。

【Aさんが退職に至った経緯】
定時のお迎えに間に合うと思って応募し、働き始めたところ、実際は長時間労働で子どものお迎えに全然間に合わず。仕事を続けることが難しくなり、やむを得ず退職しました。給与の保証もないまま、次の仕事をみつけなければならず、このような場合、失業保険は受け取れるのでしょうか。

失業保険を受給するためには条件がある

まず、労働条件云々の話の前に、失業保険が受給されるためには、いくつかの条件があるので、先に確認してみましょう。以下の条件が必要となります。

①雇用保険の加入期間が原則として12ヵ月以上あること(「会社都合」で退職した場合は例外あり)
②「失業」の状態にあること
③ハローワークに求職の申込みをしていること

募集時に労働条件を聞いていたが、入ってみたら全然違ったため退職したい、という場合、12ヵ月働かずに辞めてしまうということも多いでしょうから、①の要件を満たさないことがあり得ます。

ですがこのように、「特定受給資格者」(いわゆる「会社都合」で退職した人)に該当すれば、12ヵ月以上雇用されていなくても、例外的なケースがあります。離職の日以前1年間に、「賃金支払の基礎となった日数(基本給が支払われた日数)が11日以上の月が、通算6ヵ月以上」ある場合には、失業保険を受給できることになります。

「特定受給資格者」に該当する条件とは

「特定受給資格者」に該当するための条件についてお話しします。
「倒産」や「解雇」等により退職した場合をはじめ、「離職の直前の6ヵ月の間のうちに3ヵ月連続して45時間、1ヵ月で100時間又は2~6ヵ月平均で月80時間を超える時間外労働が行われていた」や「労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違した」ことにより退職した場合にも該当するとされています。

たとえば、8時半から17時半までを定時(休憩1時間)として1ヵ月20日間勤務している人が、毎日2時間15分の時間外労働をした場合には、1ヵ月で45時間の時間外労働をしたことになります。同じ例で、毎日4時間時間外労働をすれば、80時間の時間外労働をしたことになります。気になる人は、タイムカード等で時間外労働の時間をチェックするとよいでしょう。

「特定受給資格者」に該当する場合には、その他にも、パワハラやセクハラを受けたために退職した場合、3年間有期雇用契約を継続してきたのに雇止め(更新拒否)によって退職した場合、就業場所の移転によって通勤が困難となった場合、または職種変更を命じられたが必要な配慮(教育・研修等)がなされなかった場合等、さまざまなケースがありますので、退職理由についてはきちんと、ハローワークの担当者に説明し確認を求めるとよいでしょう。

「労働条件」に相違があればよいのか

では、「労働条件が事実と著しく相違」していれば受給できるのかという点について解説します。法令によって労働条件の明示が義務付けられているものは、賃金、労働時間、就業場所、業務内容等です。採用後、事業主が適正な手続きを経て労働条件を変更した場合には認められません。長時間労働や残業時間の点は、「労働時間」に含まれますので、著しく相違していたと認められる場合には、「特定受給資格者」として認定されると考えられます。

「特定受給資格者」と認定してもらうための注意点

退職する際にいくら会社都合であることを伝えても、「自己都合」による退職届の提出を、会社から求められることがあるかもしれません。そのような場合でも「一身上の都合により」などとは書かずに「会社都合により」と書くことが必要です。

Aさんのようなケースであれば、退職届に、退職理由を会社から言われるまま「一身上の都合により」と事実と異なることを書いて会社に提出してしまっても、労働条件の違いがわかる資料(労働契約書、労働条件通知書、就業規則、求人票など)の他に長時間労働があったことを示す資料(タイムカード、給料明細、賃金台帳など)があれば、「特定受給資格者」と認定されることがあります。ですから退職する前にできる限り前述の資料を入手しておくとよいでしょう。これらの資料は原本でなくても、写しや写真でも構いません。

また、会社に離職票を作成してもらう必要がありますが、会社が、事実と異なるのに「離職理由」の欄に「自己都合」と書いてしまうケースもあります。この場合、訂正に応じてもらうことがベストですが、それが難しいようであれば、離職票の「離職者記入欄」を間違いなく記載し、「事業主が○を付けた離職理由に異議」の欄の「有」を○で囲んで、ハローワークに提出しましょう。すると、ハローワークのほうから会社に再確認したり、資料提出を求めたりすることになり、資料に照らし合わせて正しい離職理由を認定することになります。

「特定受給資格者」と認定してもらうための手続き

「特定受給資格者」の申請はハローワークですることができます(ハローワークでは、職業紹介や雇用対策だけでなく雇用保険の諸手続きも行っています)。その際、離職票も一緒に提出しますが、離職票の事業主の記載が事実と異なっている場合には、前述のとおり「離職者記入欄」と「異議」を間違いなく記載して提出してください。不安な人はハローワークの窓口で相談してから記入するとよいでしょう。それと同時に労働条件の相違を示す資料の提示を求められると思いますので、手持ちの資料を提出してください。ハローワークによる審査の結果「特定受給資格者」と認定された場合には、いわゆる会社都合として失業保険を受給することが可能となります。

まとめ

今回のようなケースで困らないために、業務内容や勤務時間、賃金など就業前に取り決めたことは、文書で就業先からもらうようにするとよいでしょう。万が一、募集時と条件や内容が違っていた場合も一目瞭然となります。それでも会社が取り合ってくれない場合は、ハローワークの窓口に相談することをオススメします。

※この記事は2017年11月時点での情報です。


記事監修:五十嵐 亮
弁護士法人新潟第一法律事務所所属の弁護士。同事務所の長岡事務所に所属し、理事を務める。
1984年に新潟市に生まれ、同志社大学法科大学院を卒業後、2009年に弁護士登録。労務問題、交通事故分野に注力し、セミナーや研修の講師も多く経験している。
趣味はサッカー(フットサル)、野球、国内旅行。
依頼者と懇切丁寧なコミュニケーションを行い、よりよい解決に導けるよう心がけている。

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