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こだわりを捨て心を穏やかに保つトレーニング「坐禅」 椅子に座って実践する方法を紹介

心を調えるトレーニング、「坐禅」のすすめ
仕事やプライベートで上手くいかないことがあると、悩んだりストレスを感じたりすることは誰にでもあるもの。そんなときは、坐禅をして自分の心と向き合ってみてはいかがでしょうか?今回は、臨済宗妙心寺派・大安禅寺の副住職である高橋玄峰さんに、坐禅の効果や自宅でもできる坐禅の方法について伺いました。

坐禅は、心静かに坐ることで自分の心と向き合う時間

心静かに坐ることで自分の心と向き合う時間坐禅
そもそも坐禅とはどのようなものでしょうか?
坐禅とは、心を静かに保つこと。「坐」は「坐る(すわる)」、「禅」は「落ち着いた心」を意味するサンスクリット語の“dhyana”やパーリ語の“jhana”の読みに由来します。

坐禅と言うと、仏教特有のものというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、大きく言えば「瞑想」ですので、実は、仏教が生まれる以前から存在するものです。

そもそも仏教は、「自分の心のあり方次第で人生が変わる。」という考え方です。仏教には多くの宗派がありますが、自分の心を見つめ、こだわりやわがまま、自分の都合などというものを取り去っていくという点はどれも共通しています。自分自身の心に向き合う方法はさまざまで、念仏行や護摩行もそうです。そして坐禅もその一つです。

坐禅において大切なのは、呼吸です。静かに呼吸を調(ととの)えて、心静かに坐るのが坐禅です。

心が乱れているときって、呼吸も乱れますよね。このように、心と呼吸には「密接な関係」があります。これは、医学的にも証明されていること。心が落ち着いているとき、呼吸が乱れているとは感じないはずです。ですから、呼吸を調えれば、自然と調った呼吸に心も調うのです。心を調えるために、腰骨を立てて姿勢を正し、良い呼吸を心掛けましょう。

瞑想やマインドフルネスと坐禅の違いとは?
坐禅とヨガの瞑想やマインドフルネスの最も大きな違いは、目的を持つかどうかということ。瞑想やマインドフルネスには目的がありますが、坐禅は目的を持って行うものではありません。ようするに、坐禅は、「何かを得ようとして坐る」のではなく、「ただ坐る」のです。

ランニングを例にしてみましょう。瞑想やマインドフルネスが「痩せたいから走る」というように目的を持つものだとすると、坐禅は「ただ走る」。その結果、痩せたり、健康になったりするというイメージです。

つまり、坐禅は「ただ心を静かに保つ」ことだけです。坐禅に目的や「なぜやるのか」などといった理屈は必要ありません。まずはただ体験していただきたいですね。

坐禅で心の「濁り」を沈めると、それまで見えなかったものが見えてくる

臨済宗妙心寺派・大安禅寺
坐禅にはどのような効果があるでしょうか?
先に述べたように、坐禅自体は何か効果を望むことではありません。あえて言えば、「何事も受け入れている自分の心」に出会えることでしょうか。

心という透明のコップがあったとしましょう。そこにストレスを感じている心や悩んでいる心を濁った水として、その水をコップに入れる。その濁った水も、しばらく置いておくと、濁っていたものは沈殿し、上の方は澄んだ透明の水になりますよね。透明な水の部分で見れば先までよく見えます。坐禅も同じようなものです。

坐って呼吸に集中することで、次第に心が調う。水の中の濁りが沈殿して上澄みが透明になるように、心の濁りも沈殿させることができます。そうすると、これまで濁りで見えなかったものも見えるようになってくる。視野を広く持てるようになったり、自分を俯瞰(ふかん)して見ることができるようになったりするなど、周りのことも自分のことも見えるようになり、自在に心を生かせるようになります。

ここで大切なのは、濁りが沈殿したとき、コップの中には澄んだ水も濁りも共存しているということ。濁りがあると人間はつい「取り除いてなくさなければ」と思ってしまいがちですよね。ですが、その濁りも含めて自分なのです。悩んだり、苦しんだり、そういう「濁り」も自分の心だと受け入れる。むしろ、そういった悩みや苦しみが糧となり、自分のパワーになっていくのです。

濁りが共存している以上、かき混ぜれば、再び水全体が濁ることもあるでしょう。しかし、かき混ぜて濁すのも自分自身だということです。でも、坐禅のように呼吸を調え静かに坐ると、また澄んだ状態の心でよく見聞きすることができます。

坐禅を毎日続けて心のトレーニングを積んでおけば、自分の都合ばかりでなく、相手のことも考えられるようになっていきます。人との調和を大切にしようと、相手に対するアプローチが自然と変化していく。また、相手の考えを受け入れられるようになるので、これまでストレスと感じていたものもストレスとして見なくなるかもしれません。

坐禅の方法、「数息観」とは

臨済宗妙心寺派・大安禅寺の副住職である高橋玄峰さん
坐禅の方法を教えてください。
最初に坐禅をする上で大切なのは、必ずお寺で正しい坐禅の坐り方を指導してもらうことです。その正しい坐り方で、家でも気軽にチャレンジしていただきたいです。坐禅ができるお寺は、全国にたくさんあります。最初は絶対にお寺で坐禅を体験してみてください。

坐禅は、次の方法で行います。

  1. ①右足を左の腿の上にのせ、さらに左足を右の腿の上にのせて 足を組んで坐る。難しい場合は、どちらか片足を反対の腿の上にのせるだけでも良い。
  2. ②掌を上向けて右手を足の上におき、その上に左手をのせる。そして両手の親指の尖端が軽く触れるように組む。上半身はまっすぐに伸ばして軽くアゴを引き、前後左右に身を動かして頭と重心を安定させる。眼は半眼にして、1メートルほど先を見る。肩の力をぬき、背骨をまっすぐに立てる。
  3. ③軽く息を吐く。
  4. ④鼻からゆっくりと息を吸う。腹式呼吸で、お腹の底からしっかりと息を溜めるようにする。
  5. ⑤心の中で「ひとーつー」とかぞえながら、口から細く息を吐いていく。息をすべて吐ききったら、④と同様にゆっくりと息を吸う。
  6. ⑥「ふたーつー」とかぞえながら、口から細く息を吐く。これを「10」まで繰り返したら、また「1」に戻り、これを繰り返す。

ポイントは、息を吐くときにしっかりとすべて吐ききること。このように、数をかぞえながら呼吸をすることで、呼吸だけに集中します。このような方法を「数息観(すそくかん)」といいます。

自宅で坐禅をする場合は、どのように行うと良いでしょうか?
家で坐禅をする場合は、椅子に坐った状態でもOKです。椅子に坐り、足は90度に下ろし姿勢を正します。手は軽く組んでください。目は開けていても良いですし、斜め45度下を見ても良いです。

呼吸方法は、先ほどと同様です。

  1. ①息を軽く吐く。
  2. ②腹式呼吸で鼻からゆっくりと息を吸う。
  3. ③心の中で「ひとーつー」とかぞえながら、口から細く息を吐く。
  4. ④息をすべて吐ききったら、再びゆっくりと息を吸う。
  5. ⑤「ふたーつー」とかぞえながら、口から細く息を吐く。これを「10」まで繰り返す。

いつでもできるのが坐禅の魅力ですが、おすすめのタイミングとしては、起床後や就寝前など落ち着いた時間です。時間に囚われず、自分のできる範囲で行ってくだされば結構です。大切なのは、長時間続けるというより、毎日続けること。ぜひ、毎日の生活の中に坐禅を取り入れてみてください。

人間は誰でも失敗する。むしろ失敗を生かすことが大切

臨済宗妙心寺派・大安禅寺の副住職である高橋玄峰さん
仕事で失敗して落ち込んだときは、どのように考えたら気持ちが軽くなるでしょうか?
誰でも失敗はするもの。失敗しない人間なんていません。失敗してストレスを感じるのは、「自分は失敗しない人間だ」とか、「こんなことする人間じゃないんだ」というこだわりが失敗した自分を苦しめているからではないでしょうか。むしろ、失敗した事実から目を背けずに、その失敗をどう生かすか観点を変えて観てあげれば、失敗が自分の糧にもなります。

例えば、言葉遊びですが「間違い」とは「間が違う」こと。そう考える柔軟な心であれば、「間に合う」とも考えられます。さらに言えば、「間違い」と気付けている時点で、自分をしっかり見つめられている証拠とも言えるのではないでしょうか。静かに坐り心を落ち着かせて、過去に囚われず、自分が本当に今なすべきことを忘れないことが大切です。

(取材・文:imarina)

プロフィール
高橋 玄峰(タカハシ ゲンポウ)
1982年福井県福井市生まれ。2005年京都大本山妙心寺花園学園仏教学科卒業。大本山妙心寺本派専門道場で修行後、2010年5月に大安禅寺副住職に就任。現在は、法話や坐禅を通しての青年育成や地域活性に向けての布教活動を積極的に行う。また、「仏教」や「禅」をもっと身近に感じてもらえるようにと、滋賀北陸の同派青年僧の会を主とし、県内外を問わずさまざまな活動を行っている。
大安禅寺ホームページ:http://www.daianzenji.jp/

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