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アドラー心理学に学ぶ、幸せな転職の条件

「転職」という言葉が心に浮かぶとき、私たちは何を思い、考え、どんなことを基準に行動を起こすのでしょうか。転職すべきかどうか……。堂々巡りの悩みを整理し、幸せな転職を実現するための考え方を、アドラー心理学の専門家である熊野英一さんにうかがいました。

仕事をする目的を意識して、「自分軸」を持とう

あなたにとって、仕事をする目的はなんでしょうか? パッと思い浮かぶのは「生活のため、お金のため」という考えかもしれませんね。確かに、生活をしていく上でお金は必要不可欠。そして、仕事をすることは、お金を得るために有効な手段のひとつです。
では、あなたはそのお金を使ってどのような生活、どのような人生を築きたいのでしょうか? 結局のところ、私たちは「幸せになるために生きている」と、私は考えています。ともすると、日々の暮らし(その中に仕事をする時間も含まれます)に追われてしまい、本当は一番大切なはずの【自分らしい幸せ】をじっくり考える時間を持てていない方も多いかもしれません。「転職しようかな?」という考えが頭をよぎるときこそ、周りにどう思われるか? という「他人軸」ではなく、【自分らしい幸せ】を判断基準とする「自分軸」で次のステップを考えてみてはいかがでしょうか?

3つの条件を満たした、【自分らしい幸せ】とは

150万部超の大ベストセラーとなった「嫌われる勇気」(岸見一郎・古賀史健/ダイヤモンド社)で、日本でも一躍メジャーになったアドラー心理学。【自分らしい幸せ】には3つの条件があると言います。

1.自己受容:ありのままの自分、不完全な自分を認めることができる
2.他者信頼:信じるに足る根拠を求めずに、仲間を無条件で信頼できる
3.他者貢献:自分には存在価値があり、他者に役立てると思える

今の生活や、今の仕事において、あなたはこの3つの条件を充分に満たせていると感じますか? それとも、どこか欠けていると感じるところはありますか?

「現状維持」でも「現実逃避」でもない、幸せな転職を

今の生活や仕事で、この3条件のうちどこかが満たされていないと感じるなら、転職を真剣に考えてみてもいいでしょう。もし、転職が失敗したらどうしようという不安におびえ、変化することよりも「現状維持」を消極的に選択しているなら、これ以上あなたの幸福感を増やすことは難しいかもしれません。

自分に自信がないことを自覚している人は、もう少し、自分の直感に従うことも必要です。こうした人は、自分の素直な感情よりも、世間体をより重視して自分の行動を決めている場合があるようです。いつもそんな判断ばかりしていると、心身のバランスを崩してしまうようなこともありえますので、要注意です。

一方、満たされない現状がある場合に、例えば上司に悩みを相談するなど、状況改善の提案ができるにもかかわらず、そうした自分発信の努力をしていない、「現実逃避」の手段として転職を考えているなら、今一度立ち止まって、考え直してみてはどうでしょうか。

私たちは「主観」という「色メガネ」をかけて物事を見ています。上司や同僚との人間関係に悩まされ、喜怒哀楽、色々な感情がわき起こる日々かもしれません。目の前の現状がどう見えるかは、その人がどんな「色メガネ」をかけているかで、全く異なります。今の状況に対して悲観的になっているときは、もしかして、自分の見方に偏りが出ているかも。客観的なアドバイスをくれる人に相談してみるといいでしょう。

「人間は、環境や過去の出来事の犠牲者ではなく、自らの運命を創造する力がある」とアドラーは言いました。転職するもしないも、最後は、あなた自身が【自分らしい幸せ】という「自分軸」で決意すればよいのです。ただし、これは「自分の利益だけに目を向ければよい」ということではありません。自分の利益だけでなく、現在の職場であれ転職先であれ「自分らしさを生かして他者にどのように役に立てるか?」という他者貢献の視点も持って、次のステップを考えてみましょう。きっと、幸せな人生に一歩近づけるでしょう。


執筆記事:熊野 英一
(株式会社子育て支援 代表取締役)
アドラー心理学に基づく「相互尊敬・相互信頼」のコミュニケーションを伝える<親と上司の勇気づけ>プロフェッショナル。アドラー心理学に基づくセミナー・講演会に多数登壇する他、「日経DUAL」でのコラム執筆、書籍出版等を通して活発な情報発信も行う。
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。米国インディアナ大学MBA修了。株式会社子育て支援を創業し代表取締役に就任。日本アドラー心理学会 正会員。
※この記事は2017年9月時点での情報です。

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