派遣を学ぶ

派遣会社をチェンジ!必ず行いたい「社会保険の手続き」まとめ

派遣会社を変えるとき、場合によって、自分で行う手続きや確認事項があることをご存じですか。社会保険、国民健康保険、国民年金などさまざまな制度がありますが、きちんと理解している人は少ないようです。そこで今回は、「派遣社員として働くときに加入できる社会保険」と「派遣会社を変えるときに必要な手続き」について、アドバンス社会保険労務士法人代表の長沢有紀さんにうかがいました。

派遣社員として働いている人はどんな社会保険に加入している?

会社が加入している公的な保険は労働保険(労災保険・雇用保険)、社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)です。加入できる内容は、派遣社員として働いている方についても、直接雇用の社員と同じです。各保険は派遣先(就労場所)に関わらず、派遣元(派遣会社)での加入となりますので、派遣元を勤務先として取り扱い、健康保険証などにも派遣元の名前が入ります。内容は次の通りです。

●加入できる保険と内容
①労災保険・・・・・・・業務中・通勤時のけがや病気に対しての保護
②雇用保険・・・・・・・退職(失業)時の生活保障、就業促進など
③健康保険・介護保険・・業務外のけがや病気、出産などに関しての給付
④厚生年金保険・・・・・老齢、障害、死亡についての給付

派遣社員が社会保険に加入するための条件とは?

雇用保険と社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の加入については、「派遣先で働く期間」中に「派遣先で働く時間」によって決まります。派遣登録(仕事を紹介してもらうための派遣会社への登録)をしていても、実際に企業へ派遣されていなければ社会保険に加入することはできません。また、派遣先で働く時間によって加入の有無が決まる強制加入の保険ですので、次の条件に当てはまる人は、自分が希望するしないに関わらず、必ず加入することになります。

●保険別の加入条件
①労災保険・・・・・・・派遣会社に雇用されて給与が支払われるすべての派遣社員が対象
②雇用保険・・・・・・・週20時間以上働く派遣社員(事業主や役員などは除く)
③健康保険・介護保険・・派遣会社の正社員の4分の3(週30時間以上)働く派遣社員。介護保険はこのうち40歳以上の派遣社員
※従業員数501人以上の派遣会社の場合は、週20時間以上での加入となることがあります。
④厚生年金保険・・・・・健康保険、介護保険と同じ(必ず健康保険と同時加入)

派遣社員として働いている人は、派遣期間=雇用契約期間となっていることがほとんどです。派遣されていない期間(雇用契約がない期間)は保険に加入することができません。今の派遣先での仕事が終了し、同じ派遣会社で次の派遣先の仕事に移る場合などであっても、次の仕事の勤務開始日までの期間が空いていれば、今の派遣期間(派遣先)の仕事が終了すると同時に保険資格はすべてなくなります。次の派遣期間(派遣先)が始まった時点で、また新しく保険に加入し直すことになります。ただし、派遣期間終了後、最大1ヵ月以内に、同一の派遣会社のもと、次の派遣契約(1ヵ月以上のものに限る)が確実に見込まれるときは、雇用関係が継続しているものとされ、保険を継続することもできるとされています(平成14年4月24日保保発0424001号、庁保険発24号 平成27年9月30日保保発0930第9号、年管管発0930第11号)。

別の派遣会社に変えて働くときに必要な手続きは?

今とは別の派遣会社で新しい派遣先が決まっていて、就業時間などもほぼ同様、就業までの期間も空いていない場合は、保険の手続きは今の派遣会社と次の派遣会社で行います。手続きに必要な情報を自分で双方の派遣会社へ受け渡しすることになりますので、派遣会社に求められた書類などは滞りのないように提出しましょう。

●派遣会社に手続きをしてもらうために必要な書類
契約が終了した派遣会社に提出するもの・・・「退職届または退職確認書類」「健康保険証」
契約が終了した派遣会社からもらうもの・・・「離職票または退職証明書」
新しい派遣会社に提出するもの・・・「履歴書」「基礎年金番号」「雇用保険番号」

別の派遣会社に変えて働くまでに時間が空く場合、必要な手続きは?

では「次の派遣会社での就職までに時間がある」「次の派遣会社が決まっていない」「次の派遣会社で保険に入れない」など、保険に継続して加入できない場合はどうでしょうか。
自分で手続きを行わなければならないことがありますので、保険別に見ていきましょう。

●雇用保険の加入期間が空く場合
今までの派遣会社を退職するときに離職票が発行されていて、次の派遣会社での派遣先が決まっていなければ、ハローワークで受給の手続きをすることにより、基本手当(いわゆる失業手当)が受給できる場合があります。要件などは以下の通りです。

①派遣期間(雇用契約期間)が3年以上継続していたが、期間満了時に更新されなかった
②雇用契約時に、あらかじめ更新されることが明示されていたにも関わらず、派遣期間(雇用契約期間)の満了時、契約が更新されなかった ※①に該当する場合を除く

このような時間的余裕のない退職では、特定受給資格者として基本手当の給付を受けることができます。退職前1年間のうち6ヵ月以上、給与が支払われており、雇用保険に加入していたことが条件となります。
給付は、受給の手続き後、7日(給付制限なし)が経過した後から始まります。

特定受給資格者は年齢や雇用保険に加入していた期間により、受給できる日数が多くなる場合もあります。受給開始までの期間も短いですが、該当するかどうかは、ハローワークの判断となります。

また、次のような自己都合として取り扱われる退職は、一般(特別な理由のない退職)の受給資格になります。離職前の2年間のうち12ヵ月以上、給与が支払われており、雇用保険に加入していたことが条件となります。

①派遣期間(雇用契約期間)が満了する前に、自己都合で退職した
②派遣期間(雇用契約期間)の満了時に、会社から継続を求められたが、自分で断った
③派遣期間(雇用契約期間)の満了後、会社から別の派遣先の紹介を受けたが、自分の都合で断った

一般の受給資格者の場合、基本手当は受給の手続き後、7日+3ヵ月(給付制限)が経過した後から支給が始まります。

●健康保険・厚生年金保険の加入期間が空く場合
配偶者などに扶養されることになれば、保険料などの負担は原則ありませんが、雇用保険の基本手当(失業手当)を受給している間は、(受給額にもよりますが)扶養されていることにはなりません。国民健康保険・国民年金への加入となります。
※特定受給資格者、特定理由離職者は国民健康保険料が軽減される制度があります。

また、健康保険については、条件により今までの派遣会社で加入していた健康保険を自分で継続することもできます。健康保険料は会社負担分もあわせて自分で負担することになりますので、基本的には今までの2倍の保険料になります。健康保険組合などでは上乗せの給付がついている場合がありますので、事前に国民健康保険の保険料や給付内容と比べてみましょう。

まとめ

派遣会社が変わっても継続して働いているのであれば、基本的には会社側が社会保険などの手続きを行ってくれます。自分で行うような面倒な事柄は少ないでしょう。しかし、一時的に働いていない期間が出てきた場合は、状況により自身での手続きが必要になります。覚えておくと役立つ知識ですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。


記事執筆:長沢 有紀
アドバンス社会保険労務士法人 代表社員・特定社会保険労務士。
都内の名門社労士事務所勤務を経て、平成6年25歳で社会保険労務士事務所を開設。開業当時、最年少開業社労士として注目を集めた。20年以上の事務所経営において、企業実務のサポートのみならず、数々の労使トラブルを解決に導いた労働問題に強い事務所として、企業から厚い信頼を寄せられている。TV出演、取材、執筆、セミナー講演等の実績多数。

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