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人間関係にヒビが入らない! 仕事の依頼を上手に断る方法とは

「早く帰って好きなドラマを見よう」「今日こそ早く仕事を終えてリフレッシュしよう」など、職場を定時で退社すると決めたその瞬間、上司から「急ぎの仕事があるから残業して」という言葉が降りかかってくることがあります。「早く帰りたい」という理由だけで残業を断るのは、上司や社員との関係が悪くなってしまいそうでなかなか難しいのが現状。職場の人間関係にヒビを入れずに、仕事の依頼を上手に断る方法はあるのでしょうか。

そこで今回は、みはまライフプランニング代表の杉浦詔子さんにお話をうかがってきました。

あなたの周りにもいる! 「断れないさん」と「断り上手さん」

「上司や先輩、他の人からの仕事の依頼が断れない」。あなたの周りにこんな「断れないさん」はいませんか。この場合、自分ひとりで多くの仕事を抱えてしまうことになり、仕事に振り回された挙句、疲労からミスを多発。自己嫌悪に陥ったりフラストレーションがたまったり……。

その一方で、残業を頼まれても、笑顔でさっと対応し、スーッと帰宅する「断り上手さん」もいます。仕事を断っても、職場の人間関係にヒビが入ることもなく、上手に仕事をやり繰りしている。こんな人を、あなたもうらやましく感じませんか。一体どのようにして仕事の依頼を断っているのでしょうか。

上手な断り方にはコツがある“アサーション”という考え方

上手に仕事を断るには実はコツがあるのです。そのひとつが自分も相手も大切にするコミュニケーションである「アサーション」という考え方です。アサーションとは、相手の主張を尊重しつつ自分も主張するコミュニケーションのことです。

人のコミュニケーションの取り方には3つのタイプがあるといわれています。1つ目は自分中心に考えて自分の意見を主張する「攻撃的(アグレッシブ)」、2つ目は自分の意見は言わず、他者に合わせる「非主張的(ノンアサーティブ)」、3つ目は相手の主張を尊重しつつ自分も主張する「主張的(アサーティブ)」です。この3つ目がアサーションの考え方で、上手に断るために知っておきたいことなのです。では、具体的にアサーションの例を見てみましょう。

たとえば、今日のランチはさっぱりとした和食がいいなと思っていたとき、同僚から「中華料理を食べに行こう」と誘われたとします。あなたなら次のうちどう答えますか。

①「中華料理は嫌よ。違う店を探して」
②「(内心は行きたくないが)そうね。中華料理を食べに行きましょう」
③「誘ってくれてありがとう。今日はさっぱりした物が食べたいと思っているの」

①は相手の気持ちを考えない自己主張、②は相手の意見に合わせて自分を押し殺すことになり、お互いにとって気持ちのいいコミュニケーションとはいえません。③は誘ってくれた相手に感謝し、相手を否定せずに自己主張ができている、まさにアサーションです。③の対応により、また別の日に同僚から中華のお誘いがあるかもしれないし、「今日は定食屋さんかお蕎麦屋さんにしよう」という提案があるかもしれませんね。

これをビジネスの場でも応用してみましょう。たとえば、あなたが部長に頼まれてA社に提出する資料を急ぎで作成していたとします。そのとき、課長が「B社向けの資料をすぐに作って」と無理な依頼をしてきました。今すぐに両方の仕事ができない状況で、次のうちどのように対応しますか。

①「忙しいので無理です」
②「(無理だと分かっているが)はい……」
③「今日はA社の資料作成があり、明日でしたら対応できますが、B社の資料はいつまでに必要でしょうか」

①は上司の気持ちを考えず断り、②は仕事を引き受けてもすぐに完了させるのが難しく、どちらも職場の人間関係にいい影響を与えません。③のように自分の作業状況を説明し、いつならできるかをきちんと伝えることが、人間関係にヒビを入れないアサーションの答え方といえます。課長も状況が分かれば、他の人に頼んだり、部長にA社資料は明日でいいか確認したり、B社資料を明日に回せないか判断したりするでしょう。

仕事を依頼したい上司と、他の仕事を急ぎで進めている自分、どちらも大切にするには、それぞれが自分の状況を相手にきちんと伝えて、理解し合い、お互いが納得できる結論を見つけ出すことです。

明日はNO!と言える自分になる

「アサーション」の考え方は、上記の例で理解できたのではないでしょうか。これが職場や日常生活ですぐに実践できれば一番よいのですが、なかなかそうはいかないときもあるでしょう。とくに普段から自分の意見を言えなかったり、何かを頼まれると断れなかったりする人にとっては難しいかもしれません。

「明日はNO!と言える自分」になるには、経験の積み重ね、つまりトレーニングが必要なのです。まずは、日常生活でも職場でも、自分と相手のどちらも大切にしようという気持ちを持つことです。そして「断る」経験や「伝える」経験を少しずつ増やしていきます。

たとえば、忙しいときに家族から「ちょっとそこにある物を取って」と言われたら、「ごめんね。今、手が離せないから自分で取ってもらえる?」と断ってみたり、仕事が忙しいときに友人から誘いがあったら「今日は仕事が忙しいから、明日はどう?」と伝えてみたり、身近なところからトレーニングを始めてみてはいかがでしょうか。できることからで構いません。いきなり上司に「NO!」と言うのが難しいなら、まずは自分が伝えやすい人にアサーティブな対応をしてみましょう。

そしてあなたも、仕事を引き受けるときは気持ちよく引き受け、断るときは相手も自分も大切にできる、「断り上手さん」を目指していきましょう。

※この記事は2017年12月時点での情報です。


記事執筆:杉浦詔子
みはまライフプランニング代表。産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/ファイナンシャル・プランナー。キャリアプラン(生活)とライフプラン(家計)の相談と講義、執筆を実施。ひとりひとりの気持ちを大切に、話を聴かせていただき、夢や希望・目標に向かうための未来設計図を一緒に考える。女性のキャリア支援、家族や恋愛等のコミュニケーション力向上にも注力している。

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