価値観・ワークスタイルを知る

世間を賑わせた「保育園落ちた、日本死ね」から2年。保活事情はどう変わった!?

世間を賑わせた「保育園落ちた、日本死ね」から2年。国の対策は? 待機児童の数は? あれから保活状況は変化しているのでしょうか? 自身も保活経験者で、育児・教育に関わる取材・執筆を多く手がけている編集者・ライターの玉居子泰子さんに、近年の保活事情をレポートしてもらいました。

8年前も2年前も、何も変わらなかった保活状況。これから本当に変わるの?

平成30年度の認可保育園の選考結果が決まりつつあります。激戦が予想されていた都市部ではどのような結果になるのでしょうか。
あの、「保育園落ちた、日本死ね」のブログ投稿が日本中の働くお母さんの共感を多数得て、「そうだそうだ!」と声が上がってから、あっという間に2年が経とうとしています。あれから、日本の保活事情に変化はあったのでしょうか。

ちなみにフリーランスで編集・ライターの仕事をしている私自身は、8年前、長男を生後半年で保育園に入れました。産休も育休もないフリーランスの身としては、働くのを辞めることはそれまでのキャリアを完全に手放すこと。何としても保育園に入れなければと、妊娠中から10か所近くの保育施設を見学に行き、5か所の認証保育所の予約リストに名前を書き(10月時点ですでに軒並み90人待ち!)、12月の出産後すぐ、夫に申請書を持って区役所に走ってもらいました。そんな奮闘もむなしく、最終的に第6希望まで全落ちという結果となった翌年2月、授乳をしながら途方に暮れたのをよく覚えています。

私(と、この子)が保育園を必要としているのは今なのに! そのうち、保育園が増えたとして、この子は何歳? 自分がやりたい仕事で稼げるようになるまで、こんなに頑張ってきたのに! 母親になったらそのキャリアは捨てなければいけないの? と、心の中で叫んだものです。

さて、その後、丸6年経って誰かが私の代わりに全世界に訴えた「日本死ね」。うちの息子はすでに小学生になりましたが、あのまま泣き寝入りしていれば、私は今こうしてこの記事を書いていません。うちの子がどういう保育園履歴を送ったかは、後ほど少しお話しますが、その道は決して楽なものではありませんでした。

保活事情がよくなり、働き続けたいと願う人が誰でも保育園に子どもを預けられるような状況に、今の日本は少しでも近づいているのでしょうか?

政府の大慌ての政策。その結果はどう出てる?

待機児童が増え続ける問題が表面化し、政府も数年前から重い腰を上げています。平成25年4月に「待機児童解消加速化プラン」を策定し、平成29年度末までの5年間で新たに 50万人分の保育の受け皿を確保し、待機児童の解消を目指すと発表しました。

平成29年4月の時点で発表された結果がこちら。

(*厚生労働省発表:保育所等関連状況取りまとめ(平成29年4月1日)及び「待機児童解消加速化プラン」集計結果より)

保育園の定員数は確かに増えていますが、申し込み者数もどんどん増えている、まさにいたちごっこ状態。結局、平成29年度の待機児童数は2万6081人と増加し続けています。

しかも、企業主導型保育事業など規制緩和のもと、新たな条件・枠組みの中で生まれた保育施設が急増し、「付け焼き刃で箱だけを増やしている」という否定的な声も少なくないようです。

保活経験者4人が語る、それぞれの保活リアル

このような数字ばかりを眺めていても、保活の実態、保育園利用者の生の声まではわかりませんよね。そこで、ここ1、2年で保活を経験したママ・パパたちに、実際の様子がどうだったのか話を聞いてみました。正社員やフリーランスなど、働き方による違い、再就職や引越しとの兼ね合いなど、いくつかのケースを参考に、今の保活事情に打ち勝つ方法を考えていきたいと思います。

■ケース① 申請書類に希望園を20か所記入! 保険として認可外に3週間入園

東京都板橋区 30代ママ・正社員フルタイム/長男1歳(平成29年4月株式会社運営認可園0歳児クラス入園)

現在、1歳5か月の息子を、平成29年4月から区の認可園に預けています。結果的にはよかったともいえますが、妊娠中から先輩ママの苦労話を聞いていて、とても不安でした。そこで、認可保育園に入れなかったときのことを考え、空きがあった認可外施設を見つけて、3月から生後7か月の息子を預け、仕事復帰のめどを立てておきました。認可保育園の入所申請書類には第8希望を超えて、欄外に追加で合計20か所の希望を出して必死さをアピール。

家から近い第3希望の園に入園できたのはよかったのですが、新設園ということもあり、認可といえどもオフィスビルのワンフロア。園庭もプールもありません。離職率も高いようで、0歳児クラスもパートの先生を回してまかなっている状態です。園長先生含め、求人が出ているのを見かけたことも。園長先生はいつも「基準は満たしていますから」と言いますが、何度も言われると逆に心配になるときはありますね。

■ケース② 長女は幼稚園、次女は新設園にすべり込みで入園! 認可園入園は緊急事態宣言のおかげ?

東京都杉並区 30代ママ・フリーランス/長女6歳(幼稚園児)、次女1歳(平成29年4月社会福祉法人運営認可園0歳児クラス入園)

以前は都内の別の区に住んでいましたが、次女が誕生したのをきっかけに、杉並区に引越しました。当時、年中だった長女は転園が叶わず幼稚園へ。費用はかかりますが幼稚園の預かり保育をフル活用しています。次女はやはり保育園に入れたくて、保育課窓口に問い合わせをしましたが、状況は厳しいと言われました。そこで、認証保育施設や保育ママ、認可外のグループ保育も見学、申し込みをしましたが、認証は100人待ちと言われ、絶望的でした。

ただ、杉並区は平成28年4月に「すぎなみ保育緊急事態宣言」を出し(平成29年5月22日に解除)、1年間で公立の公園の敷地などを使って、過去最多の19か所の認可保育施設を新設したんです。私たちの家のすぐそばにも数か所、新設されたのがよかったのでしょう。ダメもとで申請した認可園への入園が叶いました。ですが、高円寺、阿佐谷、永福町など保育ニーズの高い区東部は、フルタイム勤務の人でも入れない、という話も聞きます。同じ区でもエリアで偏りがあるので、希望を出すときに調べたほうがいいかもしれません。

また、認可園に入園できたとしても、選べる状況にないのは事実。うちの園は、ちょっと変わった独自の教育方針で、正直疑問に感じることもあるのですが、今さら転園もできず、あまり贅沢はいえません。

■ケース③ 娘が1歳になったのを機に再就職、年度途中で引越し。認可外と認証保育所を綱渡り

東京都世田谷区 30代ママ・正社員として再就職/長女1歳(平成29年8月認証保育施設1歳児クラス入園)

私は妊娠中に退職し、娘が1歳を過ぎたタイミングで再就職を決意しました。仕事先が決まったときには、当時住んでいた埼玉県の4月入園の申請に間に合わず、なんとか空いている認可外保育所を見つけて利用しました。しかし、年度途中で今度は都内に引越しが決定。認可外から認可への転園はまず無理だろうと思っていたら、奇跡的に近所の認証保育施設で1歳児クラスの空きが見つかり転園、本当にラッキーでした。現在は、4月の認可保育園入園に向けて申請中。これが無理なら、しばらくは認証保育所でいいかな、とも思っています。埼玉も都内も、楽に入れないのは同じ、とつくづく感じています。

■ケース④ ワークライフバランスを求めて家族で移住。保育園不足の現実は厳しかった

神奈川県三浦郡葉山町 40代パパ・フルタイム勤務/長男小学1年生、長女2歳(家庭保育)

長男が7年前に生まれてからも夫婦で共働きをしてきました。以前から海の近くで暮らしたいという思いがあったのですが、長男長女ともに川崎市内の認可保育施設に0歳から通えていたので、せめて長男が転園せずに済むよう、小学校にあがるタイミングで葉山に移住しました。

息子はすぐに小学校に馴染んでくれて、海が目の前にある立地も最高なのですが、問題は2歳になる長女の保育園。認可に転園を事前申請していたものの、落選。週に2回、自然育児をする自主保育に通っていますが、妻は仕事を辞めざるを得ませんでした。今年も認可保育所の申請はしていますが、仕事を辞めた以上期待は持てません。一応4月からは幼稚園入園が決まっていますが、その幼稚園が子ども園に移行するのは数年後の予定。その頃にはもう卒園間近になっているため、恩恵は受けられないと思います。葉山はもともと共働き家庭が少なく、保育園の数がとても少ないんです。最近は僕らのような共働きの移住者も多く、ニーズは高いのだけど、供給が全く追いついていません。市の財政的にも増設は難しいようで、保育園設立には消極的のようです。

地域の保育施設の下調べ&複数申し込みは必須。実際に見学して質を見極めよう

なるほど、保育園に子どもを預けられても不安を感じている人、仕事をセーブしなくてはならなくなった人もいる保活結果。4家族のケースではありますが、これを見る限りでは、正直2年前と、もっといえば私が経験した8年前とも、さほど状況が変わっているとは思えませんでした。

私自身はというと、生後半年の息子を新設されたばかりの認証保育所になんとか入れて、その後引越し。2歳まで家族の手を借りながら家庭で保育した後、ようやく認可外施設にすべり込め、やっと本格的に仕事復帰ができたのです。厳しい状況だからといって、すぐに諦めるわけにもいかないのが保活です。今回ご紹介したケースから、今後の保活に備えてできることも見えてきました。

・フルタイム勤務でも、認可外施設、認証保育所への申し込みは必須
・認可申請中でも空きを見つけたら入園させて、職場復帰を優先させる
・同じ自治体の中でも、保育施設の数や希望者状況に差があるので、事前チェックは重要
・引越しの際、転園できるか要確認。できるだけ4月入園が確定してから転居する
・新設されたばかりの施設の場合、入園しやすいこともあるが、保育の質が保たれているかは課題。入園後にも積極的なコミュニケーションが必要

まとめ

「保育施設にすべり込めた」という体験談は多かったものの、必ずしもそこが100%安心して預けられるところかといえば、疑問も残りますね。選択肢がない、といわれる保育園選びですが、自分の目でできるだけ多くの施設を見学し、最終的にどの保育園に入れるのが我が子にとって安心なのか、しっかり見極めていく必要があるかもしれません。

※この記事は2017年12月時点での情報です。


記事執筆:玉居子泰子(たまいこ・やすこ)
翻訳書籍編集、育児雑誌編集を経てフリーランスの編集・ライターに。『AERA with Baby』『AERA with Kids』『ビズマム』『クーヨン』などの雑誌、「日経DUAL」「soar」などのウェブマガジンで育児・教育に関わる取材・執筆を多く手がける。個人サイト「考えるha-ha」http://tamaikoyasuko.wixsite.com/thinkinghahaを運営。

関連ワード