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喧噪を忘れる癒しの地!心を洗う「ひなびた温泉」おすすめ5選

ⒸKaoru Iwamoto

温泉旅行というと、ついついお風呂のゴージャスさや、お料理のレベルで行き先を選びがちではありませんか?あえてそこにひとつ「ひなびた温泉」という選択肢を加えてみるのはいかがでしょう。「ひなびた温泉って何?」と思っている人も、昔ながらの風情や素朴な味わいに触れ、一度湯浴みを体験すれば、きっとその魅力のとりこになるはず。

今回は、ひなびた温泉研究所所長の岩本薫さんに「ひなびた温泉」の魅力やおすすめの温泉スポットについて教えていただきました。ぜひ、ひと味違った温泉の表情を発見してみてください。

「ひなびた温泉」とはどんな温泉?

え~、みなさんこんにちは。「ひなびた温泉」にハマって、うん十年、ひなびた温泉研究所ショチョーの岩本薫と申します。
さて、じゃあ、その「ひなびた温泉」とはどんな温泉なのかっていうと、ちょっと時代に取り残されたような温泉のことである。え?そんな温泉ってなんか古臭そうでいやだって?まぁ、確かに時代に取り残されたようなわけだから新しさはまったくない。でも、温泉というのは新しければいいというものではない。逆に、古くから(それはもう百年、二百年、三百年と……)その場所にこんこんと湧き出てきた温泉は、人々の病気や怪我を治してきた、いわゆる霊験あらたかな湯だったりすることが多く、それは現代のボーリング掘削で無理やり湧出させた薄い温泉とは違って、これぞ温泉のチカラだ!と思える湯だったりするのだから。

時間が染み込んでいるかのような、ひなびた温泉のディテールを味わおう ⒸKaoru Iwamoto

それだけじゃない。ひなびた温泉にはいたるところに“時間が染み込んでいる”のである。浴舎にも、湯船にも、そしてなみなみと掛け流された湯の表情にも“時間が染み込んでいる”のだ。そのなんとも名状しがたい味わいをじわりと感じ取りながら湯にひたる。それらの味わいにもひたる。それこそがひなびた温泉ならではの醍醐味なのだと言いたい。また、地元の人たちとのふれあいが生まれるのも、ひなびた温泉ならではだ。ゴージャスではない、ひなびた温泉の場合、湯船はこぢんまりとしているところが多く、そんな湯船につかっていると見知らぬ人同士でも自然と会話が生まれる。素朴な感じの地元の人と語らっていると、ああ、こういうのもまた旅の楽しさなんだよなぁ~っと実感できるのだ。

岩本所長おすすめ!「ひなびた温泉5選」

では、初心者向けから愛好家向けまで、おすすめの「ひなびた温泉」をご紹介。

■四万温泉(群馬県)積善館
まずは四万温泉(群馬県)の積善館をあげたい。ここはボクがいつもひなびた温泉入門編としておすすめする温泉で、なんで入門編なのかというと、ひなびた温泉の場合、ときとしてボロ宿で料理も家庭の晩御飯に毛が生えたぐらいのレベル、なんていうところも珍しくない(ボクはそういうの、きらいじゃないが……)。でも、ここは、宿も料理もちゃんとしていて、それでいて日本最古の木造湯宿建築があったり、『千と千尋の神隠し』のモデルになったといわれる赤い欄干の橋があったり。そして、大正ロマネスク様式のレトロな湯船がなんとも素晴らしい「元禄の湯」がある。湯だって湯船の底から源泉が湧き出す足元自噴泉なので、酸素に触れないフレッシュなままの源泉を体で受け止められる贅沢な湯なのである。まずはこの積善館の湯で、ひなびた温泉に“入門して”、ひなびた温泉のディープな世界へと入って行ってもらいたい。

大正ロマネスク様式のレトロな“ひなび感”がたまらない「元禄の湯」 ⒸKaoru Iwamoto

■奥鬼怒温泉郷(栃木県)日光澤温泉
次におすすめしたいのが奥鬼怒温泉郷(栃木県)の日光澤温泉だ。ここに行くためには誰であろうと2時間ほど、ちょっとした山道を登って行かなければならない。環境保全のために一般車両の乗入れが禁止されているからだ。だから宿に到着した頃には、ハイキングのほどよい疲労感が感じられて、すぐに温泉につかりたくなる。で、そんな体を硫黄の香りがかぐわしい白濁した湯が癒やしてくれるのだ。

日光澤温泉の内湯 ⒸKaoru Iwamoto

宿も、なんていうか宮沢賢治の『風の又三郎』にでも出てきそうな、ノスタルジックな山の中の木造校舎のような風情ある建物で、3匹の可愛い柴犬だっている。体も心も癒やされる日光澤温泉で、山のいで湯の魅力を存分に楽しめるはずだろう。

日光澤温泉のノスタルジックな建物 ⒸKaoru Iwamoto

■小谷温泉(長野県)大湯元 山田旅館
さて、山のいで湯といえばもうひとつ、小谷温泉(長野県)の大湯元 山田旅館をおすすめしたい。ここはいわゆる武田信玄の隠し湯のひとつ。戦国時代の武将たちの隠し湯といえば、病院もなかった時代、今でいう“野戦病院”のような役割を担っていたわけで、つまりそれだけ温泉の効力がある湯なのだともいえる。登録有形文化財にもなっているだけあって、ここも木造建築が素晴らしい。しかも標高850mの山間にあるので、景色だって雄大なのだ。湯上がりのビール片手にほろ酔いしながらその眺望を楽しむ。なんとも贅沢な時間が過ごせるのだ。

大湯元 山田旅館の「現夢の湯」 ⒸKaoru Iwamoto

■鳴子温泉(宮城県)姥乃湯旅館
ひなびた温泉というと東北が宝庫だったりする。次はその東北からひとつ、鳴子温泉(宮城県)の姥乃湯旅館をおすすめしたい。鳴子温泉といえば東北を代表する湯治場の歴史がある温泉街。湯治の湯のチカラというものを体中で感じてもらいたいのである。姥乃湯旅館は一般の旅館と、自炊で昔ながらの湯治気分を楽しめる自炊部がある。湯治気分を味わうならばだんぜん自炊部だ。また、ここは4つの源泉が楽しめるのも魅力だったりして、一粒で四度おいしい温泉旅館なのである。

姥乃湯旅館自炊部に泊まれば、昔ながらの湯治気分が体験できる ⒸKaoru Iwamoto

さらには、ちょっと足を延ばせば、お隣の東鳴子温泉に、髙友旅館という温泉通に大人気の名物・黒湯もあるのでぜひとも日帰り入浴で立ち寄ってもらいたい。スゴいんだから、ここの黒湯は。

■川内高城温泉(鹿児島県)
東北の湯を紹介したならば、もうひとつのひなびた温泉の宝庫といえる九州の湯も紹介したい。川内高城温泉(鹿児島県)。ここは西郷隆盛ゆかりの温泉街であり、温泉街全体が、時間が止まったかのようにひなびている。それはもう、映画のセットのごとくで感動的なのだ。まぁ、ある意味、非日常的でインパクトのある旅が楽しめると思う。湯も熱めで体も心もシャキッとする名湯。なんてったって西郷隆盛をとりこにした湯なのだから、そんな湯を味わいに行くっていうのも、温泉旅の目的としてオツなのではないだろうか。世の中の観光地の、いわゆるゴージャスで素敵な温泉の対極になる温泉街だ。ここが気に入れば、あなたも立派なひなびた温泉愛好家だといえるだろう。ようこそ、ディア・フレンド!

まるで映画のセットのような、川内高城温泉の温泉街 ⒸKaoru Iwamoto

まとめ

そういえば、誰かが言ってたっけな。風呂は体を洗う場所で、温泉は心を洗う場所なのだと。まったくもって同感したいし、だからこそ、ひなびた温泉なのである。時代に取り残されたかのようにそこにあるひなびた温泉は、いわば現代の時間の外にある。トレンドもマーケティングもどこ吹く風で、地元の人達に愛され続けながら、いつまでも変わらずにそこにあるひなびた温泉は、ストレス社会で疲弊した心に、忘れていた大切な何かを与えてくれるし、そしてまた、風情豊かな日本の温泉文化を教えてくれる。
ぜひ、ひなびた温泉にトライしてみてください。旅の楽しみ方がまたひとつ広がること、請け合いですから。

※この記事は2018年2月時点での情報です。

記事執筆:岩本 薫
本業のコピーライターのかたわら、ひなびた温泉研究所ショチョーとして、全国のひなびた温泉をめぐっている。Webマガジン「ひなびた温泉研究所」(http://hina-ken.com)主催。著書「ひなびた温泉パラダイス」(山と溪谷社/http://hinapara.info/)好評発売中。
 
 
 
 
 

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