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仮面ライダー元ヒロインが語る!仮面ライダーで見えてくる社会が求める理想の女性像とその変化

1971年から約半世紀に渡り続いているテレビ番組「仮面ライダーシリーズ」。みなさんも子どもの頃に見た記憶があるのでは?レギュラーで登場する出演者の中でも、毎回注目を浴びるのが紅一点のヒロインの存在。このヒロインを通して見えてくるのが、時代や当時の社会を反映する理想の女性像です。

昭和と平成の過渡期に「仮面ライダーシリーズ」のヒロイン役を演じた田口萌さんに、ご自身の出演経験から感じた、仮面ライダーを通して見えてくる理想の女性像の変化についてお話いただきました。
 

「仮面ライダーBLACK」ヒロインの私が考える!昭和と平成、理想の女性像

私の女優としての「プライドの原点」となった特撮ドラマ、「仮面ライダーBLACK」に出演が決定したのは昭和も終わりに近づく1987年でした。今は挑戦したいオーディションがあればスマホで気軽に応募できる時代ですが、私が新人の頃は手書きの履歴書を郵送するようなアナログな世の中でした。

10年振りのシリーズ復活ということで、一般公募で集まった書類は約8,000通、最終審査に残ったのは、私の記憶では男性100名、女性50名ほどだったと思います。撮影所のスタジオがオーディション会場で、そこでヒロイン役に合格するわけですが、実際には4名の女性が選ばれました。ショートヘアでボーイッシュだった私は「ヒロインとはいえ、悪役かな」ととっさに感じたことを憶えています。また、「なぜ私が?」と思ったのは、当時の「ヒロイン像」に私なりのイメージがあったからでしょうか。

昭和から現在まで「仮面ライダーシリーズ」に描かれるヒロイン達は、世の男性ファンから見た理想の女性像としてどう移り変わっているのでしょう。昭和のヒロインを演じた私なりにお話してみたいと思います。
 

昭和ライダーのヒロイン像とは……「憧れの存在」?!

「昭和はテレビの時代」といわれるほど、次々といろいろな番組が生まれました。歌番組、アニメ、バラエティ、時代劇、ホームドラマ、そして子ども達を対象にした特撮ドラマの数々です。

中でも私に縁の深い「仮面ライダーシリーズ」のヒロインを振り返ってみると、昔はドラマの「華」的な要素が強かったように感じます。今のようにSNSなどでヒロイン達の素顔や日常の情報が簡単に得られるわけではないので、特撮に限らずどのドラマにおいても、ヒロインの存在は「高嶺の花」といった印象がありました。美しく優しげでしっかり者といった理想のお嫁さん像、または少し影のあるミステリアスな美形でちょっぴりお色気あり、といったイメージです。

「仮面ライダー1号・2号」に出演されていた女優の島田陽子さんや中田喜子さんは、見た目が少し大人びていて正統派なお嬢様という感じがします。そう考えると昭和のライダーシリーズのヒロインは、男性ファンにとって「憧れの存在」ということになるでしょうか。私がオーディションに合格して感じたのも、この女性らしい「正統派お嬢様」といった雰囲気が自分にはあるの?!と思ったからかも知れません。
 

平成ライダーは劇的に「新しいヒロイン像」を打ち出した?!

では、昭和から平成への移り変わりで、ヒロイン像はどんな変遷を遂げてきたのでしょう。
私が出演した「仮面ライダーBLACK」はまさに昭和最後の作品になり、その後バトンタッチした「仮面ライダーBLACK RX」は昭和から平成をまたぐ作品として、印象に残っている人も多いと思います。

それ以降、テレビドラマシリーズとしては、またも約10年という長いブランクを経て、全く新しいヒーロー像を描いた「仮面ライダークウガ」が2000年に登場します。ファンの間では、この作品がなければ現在のライダーシリーズにはならなかっただろうと語られていますが、ヒロインはどうだったのでしょうか。実は私は、平成ライダーのヒロイン像のベースになる部分が、すでに「仮面ライダーBLACK」と「RX」で描かれていたのでは、と思える点を見つけました。それをお話する前に、まずは平成のヒロイン像について考えてみます。

昭和のヒロインは敵にさらわれて助けられるといった場面が多く、いつもヒーローに頼っているイメージだったのに対し、平成初期のヒロインはドラマの流れにしっかりと存在し、ライダーと共に成長していく姿が描かれるようになります。

作品にもよりますが「クウガ」では主人公をサポートする役回り、「鎧武/ガイム」ではヒロインが最後には人間ではなくなったり、「龍騎」では悪ボスの目的がヒロインである自分の妹を救うことだったりなど、ストーリーに深く関わるようになっているのです。

そして現在では、一緒に協力して困難にぶつかってくれる存在として、ときにサポートし、ときにコミカルな明るさで元気にしてくれる、というキャピキャピアイドル的な要素が強く描かれています。実際、演じている方々もグラビアなどで活躍していたりして、昭和時代の「女優」というイメージとは違う気がします。

ターゲットになる視聴者の変化も影響しているかもしれません。昭和では子ども達に向けて描かれていた作風が、平成になると親になった昭和ライダー世代が、我が子と一緒に見られる作風になりました。ヒーロー像がママ達を狙ったイケメン路線に移行したり、ヒロイン像も大人びた女性のイメージではなく、友達や妹のような感覚を取り入れたりしています。

ターゲットを子どもだけではなく親世代にまで広げ、大人の男性目線のグラビアアイドルを起用するあたりは、「ドラマの中だけに終わらないヒロイン像」という新たな打ち出し方が生まれた、ということなのかもしれません。最近では、平成ヒロインがライダー出演後にイメージビデオや写真集などを出すのが定番になりつつあるそうです。私がヒロインだった昭和には考えられなかったことですね。
 

先見の明?!昭和の「BLACK」「RX」が平成ライダーのヒロイン像を描いていた?

さて、先ほど触れた、昭和の「BLACK」「RX」がすでに平成ライダーのヒロイン像を描いていたというお話ですが、私なりに平成ヒロインを考えてみたとき、ちょうど「BLACK」「RX」は「仮面ライダーシリーズ」の前後10年の狭間に存在し、昭和と平成をつなぐ特殊なライダーである、という点に着目しました。

「BLACK」にはふたりのヒロインが登場します。暗黒結社ゴルゴムに改造される主人公の敵役・秋月信彦(シャドームーン)の妹であり、兄の親友・南光太郎(仮面ライダーBLACK) に恋する秋月杏子と、秋月信彦の恋人である紀田克美。このふたりも平成ヒロイン同様、ストーリーの根幹に大きく関わる存在です。杏子は女子高生でアイドル的なポジションの「妹」、克美はアクティブな女子大生で、主人公と敵対してしまう親友の「恋人」。作品におけるヒロインとしては、男性ファンにとってタイプの違う女性をどちらも楽しめる展開になっていたのでは?と思います。

しかも、杏子は兄の信彦を悪に奪われて失うも、光太郎とはずっと一緒にいられる関係。一方で克美は、恋人の信彦に会えぬまま時が過ぎ、再会を果たすも、彼はすっかり悪に改造されてしまっていたという悲劇。こういったタイプの違うヒロイン像が同時に設定されるのは、「しっかり者キャラ」と「アイドルキャラ」がいる平成ヒロインにもみられる傾向です。たとえば「仮面ライダークウガ」では、主人公の友人で考古学を研究する沢渡桜子と、主人公の妹で保育士の五代みのり。桜子はしっかり者の聡明なタイプで、みのりはおっとりしたほんわか系です。

また「タイプ別」という観点でいえば、「仮面ライダーアギト」の風谷真魚は活動的で常識人ながら超能力を持つというミステリアスな魅力があり、サブライダーG3の上司・小沢澄子は自信家で勝気な性格、豪快で仕事がデキる姐御系でした。「BLACK」に登場するヒロインを男性目線で見ると、光太郎を慕っている可愛い杏子か、信彦を失った悲しみに耐えてがんばる健気な克美か、どちらも「僕が守ってあげたい」と感じる存在だったような気がします。

そして「RX」になると、バリバリのキャリアを持った女性カメラマンのヒロインが登場します。私が思ったのは、昭和最後の「BLACK」は、その後の複数のヒロインを描くベースになり、「RX」では日本の時代が大きく変わろうとした背景を受けて、自立した女性像を描こうとしたのではないかということです。それまでの「守ってあげたい」ヒロインから、男女平等でお互いに「尊重し合える」女性像への変化。社会情勢や時代背景が移り変わる中で、男性が求める理想の女性像は、憧れの花嫁候補ではなく、いざというときに協力し合える親友、というふうになっていったのではないでしょうか。

SNSが普及し、いつでもどこにいてもリアルタイムでヒロインの情報が入手できる現在。かつては毎週テレビの前で一週間、首を長くして待たなければ会えないヒロイン達でした。そこには今よりもっと、「理想」の女性像に思いをつのらせる男性心理が存在していたのかもしれませんね。
 

まとめ

これからもずっと「仮面ライダーBLACK」を語り継いでもらえたら本当に幸せです。そしてまた時代が変わり、今後はどんな新しいヒロインが「仮面ライダー」に登場するのか、皆さんと一緒に楽しんでいきたいと思います。
最後に、「仮面ライダーBLACK」の撮影現場は、今振り返っても過酷で厳しい思い出が満載です。でも、それと同じ分だけ、かけがえのない大切な現場でした。1年間、監督や多くのスタッフ、共演者の皆さんと家族同様に毎日を過ごし、特撮ドラマ作りに必死だった日々は、今の私を支える「プライドの原点」です。

※この記事は2018年2月時点での情報です。
 

記事執筆:田口萌(たぐちもゆ)
劇団 球主宰・女優・劇作家・演出家。
1987年『仮面ライダーBLACK』ヒロインデビュー。
2001年「北区つかこうへい劇団 井上ひさし戯曲作法塾」にて執筆活動開始。
小劇場公演の作・演出、TV番組等の構成作家を経て、2011年「劇団 球」旗揚げ。
2013年『テアトロ』第24回新人戯曲賞佳作「My Home=home ground(マイホームグラウンド)」。
2014年「チャージ」(劇団銅鑼にて執筆)、中学・高校の演劇鑑賞作品として全国巡演中。
次回公演は劇団 球 第22球『紫陽花』2018年6月6日(水)~10日(日)梅ヶ丘BOX。

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