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「お会いになられます」「お話になられます」は二重敬語!知っておきたい敬語のポイント

あなたは、仕事の場で敬語をうまく使いこなしていますか?敬語は文字通り、相手を敬う言葉ですが、気を遣い過ぎて堅苦しい表現になったり、丁寧過ぎて意味不明な言葉になったりしていませんか?その場にふさわしい敬語を使えないということは、社会人らしく見えないだけでなく、相手に不快な思いをさせたり、かえって嫌味ととられたり、評価を下げることにもなりかねません。つまり、きちんとした敬語を使えれば、印象がよくなり評価も上がるということ。状況に応じた敬語を使いこなすことで、信頼を得ることもできるのです。

今回は、相手との関係性やシチュエーション別の敬語の使い方、好印象を与える敬語の魅力について、ビジネス作家の臼井由妃さんにうかがいました。
 

人間関係をよくしたいのなら、場に応じた敬語を使いましょう

敬語は「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3つに分けられます。丁寧語は、相手に対し直接敬意を表する表現で、「です」「ます」などがこれにあたります。尊敬語は目上の人を敬う表現で「相手を立てたいとき」に使うもの。また謙譲語は、「自分を下げることで相手を立てたいとき」に使います。

このうち「丁寧語」は最も簡単に相手に敬意を示すことができる表現です。「です」「ます」を使った、店頭での店員とお客様との会話の例をご覧ください。

<お客様>:「このジャケット、他の色はありませんか?」
<店員>:「はい、あります。こちらは今日入荷したばかりの色です。お客様にはこちらの色の方が、肌なじみがよくてお似合いだと思います」

シンプルな受け答えですが、お客様には十分丁寧さが伝わったと思います。このように、「です」「ます」を交えた表現は、たいていの状況に対応できます。社会人になって間もない人が、最初から「ございます」「かしこまりました」といった堅苦しい表現を使う必要はありません。無理をして、かえってちぐはぐな言い回しになれば、笑われてしまうのが落ちです。

先日、スーパーマーケットのワイン売り場で、私はあるメーカーの白ワインを探していました。近くにいた店員さんに、どこにあるのか尋ねたところ、

<店員>:「そのお品でございましたら、当店ではお取り扱いしてございません。誠に恐縮ですが、他のお品をお選びいただきますよう謹んでお願い申し上げます」

と、ちぐはぐな答え。この表現がまったくの間違いとは言いませんが、私には丁寧を超えて、耳障りの悪い言葉にしか感じられませんでした。ときに、相手を立てようとするあまり、こうした言い方をしてしまうことがあるかもしれませんが、過ぎた敬語は気持ちが悪く、不快感を与えるということも心得ましょう。自分と同年代や年下のお客様、顔なじみのお客様でフランクな会話を望む方や、気心の知れたお得意様との打ち合わせの場などでは、丁寧語だけでも十分敬意は伝わるといえます。
 

「尊敬語」でコミュニュケーションスキルをレベルアップしましょう

「丁寧語」を自然に使えるようになったら、レベルアップ。次は「尊敬語」もスムーズに使いこなせるようにしたいものです。尊敬語は、丁寧語よりもさらに高い敬意を示す言葉ですが、難しく考える必要はありません。相手の言動「〇〇する」を、「ご〇〇なさる」「お〇〇になる」の定型に当てはめるだけで、難なく使いこなすことができます。
たとえば、オフィスでのビジネス会話であれば次のとおり。

誤) 常務が呼んでいる。 → 正) 常務がお呼びになっています。
誤) お客様が喜んでいる。 → 正) お客様がお喜びになっています。
誤) 商品を配送する。 → 正) 商品をご配送なさいます。
誤) 取り扱い方法を説明する。 → 正) 取り扱い方法をご説明なさいます。

この程度であれば、すぐにでも使いこなせますね。このように、尊敬語は決まった形で簡単に言うことができますが、いくつかの言葉に関しては、別の表現を使うことが多いので、覚えておくといいでしょう。

<定型以外で表現する言葉1>
×来ます ○いらっしゃる、おいでになる、お越しになる、お見えになる
例)先ほど、〇〇様がいらっしゃいました。
例)1時間ほど前、〇〇会社の田中部長がおいでになりました。
例)本日は大勢の方が、お越しになります。
例)〇〇先生は、すでにお見えになっています。

<定型以外で表現する言葉2>
×見ます ○ご覧になる
例)部長、こちらの企画書はご覧になりましたか?

<定型以外で表現する言葉3>
×言います ○おっしゃる
例)〇〇さんのおっしゃる通りです。

<定型以外で表現する言葉4>
×知っています ○ご存じだ
例)皆様、ご存じですね?

<定型以外で表現する言葉5>
×います ○いらっしゃる、おいでになる
例)あちらにいらっしゃるのが、臼井さんです。
例)ご担当者様は、おいでですか?

<定型以外で表現する言葉6>
×行きます ○いらっしゃる、おいでになる
例)高橋様は、明日10時に取引先にいらっしゃるそうです。
例)高橋様は、明日10時に取引先においでになるそうです。

これらは、ビジネスの場でよく使われる言葉ですので、自然と口にできるようにしたいものです。尊敬語は目上の人を敬う表現で「相手を立てたいとき」に使うものですから、上司や先輩と話す機会が多いという人は、ぜひ身につけておきましょう。しかし、自分に気を許して親しみを込めて接してくれる相手には、尊敬語を使わず丁寧語で会話をしたほうが、相手との距離が縮まり人間関係が円滑になることもあります。
 

無意識に「二重敬語」を使っていませんか?

「お越しになられる」とか「お読みになられる」「ご覧になられる」という言い方をよく耳にしますが、これらはひとつの語について、同じ種類の敬語を二重に使った奇妙な表現の「二重敬語」といえます。しかし、気づかずに使っている人が、何と多いことでしょうか。 

中でも、「お〇〇になられる」というスタイルの二重敬語がとても多いように思います。「お会いになられます」「お話になられます」などがそれにあたりますが、それぞれ「お会いになります」「お話になります」というだけで尊敬語になっているのに、さらに「られる」という尊敬語をプラスしてしまう。ビジネスシーンで、こうしたミスを重ねていると社会人としてのスキルを持ち合わせていない人と、思われかねません。せっかく敬語を使っていても、肝心なところで間違うと、評価が下がってしまいます。
次の2点も敬語をうまく使う上でおさえておきたいポイントです。

・それ自体で敬語になっている言葉には余計な敬意表現はつけない。
・万事において「お」をつければ敬語になると捉えない。

また、二重敬語に表れているように、「長い表現のほうが敬語らしく聞こえる」という考え方があなたにあるとしたら、改めましょう。正しい敬語は、すっきり短く聴き心地がいいものです。声にして、どこかくどいと思ったら、その敬語には誤りがあると思っていいでしょう。
 

敬語の仕上げは「謙譲語」

「丁寧語」「尊敬語」とレベルアップしたら、仕上げは「謙譲語」です。謙譲語は、自分の言動をへりくだって言うときに使います。へりくだるというと、ピンとこない人もいるかもしれませんが、極めてシンプルです。自分の言動である「〇〇する」を、「お〇〇します(ご〇〇します)」「お〇〇いたします(ご〇〇いたします)」という定型に言い換えるだけです。たとえば、

声をかける →お声がけします
断る → お断りいたします
提案する → ご提案いたします

これだけでも、へりくだった印象になります。

さらにいえば、相手には丁寧語や尊敬語を使い、自分には謙譲語を使うというスタイルで会話をすると、敬語の質がより高まります。

1.親しみを込めて接してくれる相手には、丁寧語で会話をする
→明日までに企画書をつくるなら、手伝いましょうか?

2.上司や先輩などと接するときには、丁寧語と尊敬語で会話をする
→明日までに企画書をおつくりになるなら、手伝いましょうか?

3.地位や立場が自分よりもはるかに上であったり、年長者と接する際には、尊敬語と謙譲語で会話をする
→明日までに企画書をおつくりになるなら、お手伝いいたしましょうか?

3がもっとも丁寧かつ、へりくだった印象になると思います。ビジネスシーンでは、これくらいの言い回しが求められますが、難しく考えずに「丁寧語や尊敬語では物足りない」と感じるときに謙譲語を使うといいでしょう。
 

まとめ

敬語は、自分の立場や状況にふさわしい使い方をすることで、相手に直接敬意を示すことができます。すると相手もあなたに敬意を持って接してくれるでしょう。きちんと使いこなせば、自分自身が得をするのです。紹介した内容を参考に、社会人としてしっかりした敬語を身につけてくださいね。

※この記事は2018年2月時点での情報です。
 

記事執筆:臼井由妃(うすいゆき)
著作家・講演家・熱海市観光宣伝大使
33歳で結婚後、病身の夫の跡を継ぐ形で専業主婦から経営者に転身。独自の経営手法で成功を収め、多額の負債を抱えていた会社を優良企業へと導く。その手法がさまざまなメディアで紹介され、日本テレビ系で放送された「マネーの虎」に出演する等、好評を博す。理学博士号(Ph.D.)・MBA・行政書士・宅地建物取引士等を取得したことでも知られ、知識の広さと解説力には定評がある。新聞や雑誌、テレビ、ラジオ等出演多数。著書は「できる人はなぜ、本屋で待ち合わせをするのか?」(翔詠社)、「1週間は金曜日から始めなさい」(かんき出版)、「仕事の8割は人に任せなさい!」(青春出版社)といったビジネス書から、「ほめ言葉の魔法力」(PHP文庫)、「心が通じる ひと言添える作法」(あさ出版)といった実用書まで幅広い。
●ビジネス作家・エッセイスト・講演家「臼井由妃」公式ホームページ
http://www.usuiyuki.com

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