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ロシア流別荘生活「週末ダーチャ」は新しいリフレッシュ法

いつも職場と家の往復ばかりでは味気ないもの。仕事に行き詰まったり、人間関係に悩むこともあるでしょう。そんな日頃のストレスを、みなさんはどうやって解消していますか?心と体の癒やし術として、いま関心を集めているのが、週末だけの田舎暮らし。そのお手本ともいえるのが、ロシアでは一般的なセカンドハウス「ダーチャ」です。

そこで今回は、NPOダーチャサポート理事の豊田菜穂子さんに、週末ダーチャの多彩な楽しみ方をうかがいました。
 

週末ごとにセカンドハウスに通うロシアの人々

近年、欧米先進国では田園生活が見直されています。日本でも田舎暮らしやスローライフが注目を集めていますが、どちらかといえばリタイア後のセカンドライフの過ごし方として捉えられているように思います。でも、ゆったりとした時間や癒やしの場が必要なのは、むしろ働き盛りの現役世代ではないでしょうか?それを実践しているのが、ロシアの週末ダーチャ暮らしです。

ダーチャとはロシア語で「別荘」のこと。けれども日本の別荘とはだいぶ異なります。自給自足できるほど広い菜園があり、寝泊まりする家はごくごくシンプル。別荘というより、菜園つきセカンドハウスといったほうが近いでしょう。

ロシアでは、約8割の人がこのダーチャをもっているといわれます。平日は都会で働き、週末になると郊外のダーチャに通って自然と触れ合う。こんなバランスのとれた暮らし方が、ロシアでは当たり前なのです。

金曜の夜、ロシアの人々は仕事を終えると車に荷物を積み込み、家族や友人たちと一緒にダーチャへ向かいます。ダーチャがあるのは、都心から1~2時間くらい離れた自然豊かな地。ここで家庭菜園やガーデニングに精を出したり、バーベキューを楽しんだり、サウナで汗をかいたり、思い思いの週末を過ごします。そして心身ともにリフレッシュして、日曜の夜、再び都会に戻っていくのです。
 

趣味やスポーツ、DIYを楽しむ週末ダーチャ暮らし

ロシアのダーチャは、もともとソ連時代に働く人々の休息の場として、国から与えられたものでした。政変で深刻な食料不足に見舞われたときも、人々はダーチャで必要最低限の食料を自らつくって、危機を乗り越えてきました。

いまもロシアの人々は、ダーチャの家庭菜園で無農薬の野菜を育てていますが、それだけではありません。人それぞれに週末の暮らしを楽しみ、ダーチャの使い方も十人十色です。その例をいくつかご紹介しましょう。

■アウトドアライフやスポーツの拠点に
川の近くなら釣りやボート遊び、森の近くならキノコ狩りや野鳥観察、ダーチャの庭では卓球やバスケットボール。都会ではできないことを、自然豊かな環境の中で思う存分楽しむのがダーチャ流です。遊び疲れたら、屋外のテーブルでティータイム、夜は星空を眺めながらビールやウォッカで乾杯。時間を気にすることなく、夜遅くまでダーチャ仲間たちとの語らいが弾みます。

■趣味に没頭できる専用スペースをもつ
ダーチャに来たら、とことん趣味に没頭する人もいます。面白いのは、専用の趣味スペースを設ける人が多いこと。たとえば絵を描く人ならアトリエ、読書好きならホームライブラリー、音楽好きなら楽器演奏や音楽鑑賞を大音量で楽しめる部屋。ほかにもビリヤードルームやカラオケルーム、自慢のコレクションを飾るための部屋など、都会の住宅ではあきらめていたプラスアルファの部屋をもてるのも、ダーチャの魅力です。

■DIYでオリジナルインテリアを楽しむ
日本でもいま、ハンドメイドやDIYがブームですが、ロシアのダーチャは手づくり尽くし。週末ごとに通っては、少しずつ心地よい空間をしつらえていきます。花柄のカーテンやパッチワークのベッドカバー、庭のベンチやテーブル、子どもたちが遊ぶブランコや砂場も手づくり。それどころか、ダーチャの家を自分で建ててしまう人もいるほどです。

■のびのびした環境で子育て
ダーチャのメリットとして、ロシアの女性たちが真っ先に挙げるのが、子育てに最適な環境であることです。ロシアでは女性の就業率が高く、既婚女性のほとんどが共働き。平日は忙しくて子どもたちと接する時間がとれない分、週末はダーチャで親子の絆を深めます。新鮮な空気の中でのびのびと子どもたちを遊ばせると、アレルギーが改善されるという報告もあります。

■ただひたすら休む派も
ダーチャに来ても何も特別なことはしない、という人もいます。特に働くシングル女性に多いのですが、菜園もつくらないし、花も木も植えない。頑張っている自分へのごほうびとして、週末はダーチャできっちり休み、月曜からの仕事に備えるのだそうです。
 

都会と田舎のいいとこどり!国も推進する二地域居住

こんなふうにロシアの人々は、ふだんの生活の場とは違う居場所をもち、週末のたびに行き来してスイッチを切り替えています。リフレッシュできる場所があるから、平日の仕事も頑張れる。ダーチャはロシア人にとって、都会でよりよく生きるためのオアシスのような存在なのです。

日本でも週末ダーチャ暮らしに憧れ、実践する人が少しずつ増えてきました。気の合う仲間同士でダーチャをシェアしている人もいますし、ダーチャ暮らしをサポートするネットワークもできつつあります。

実は、国もダーチャ暮らしの推進を10年ほど前から始めています。国土交通省が進める「二地域居住」がそれです。都市に人口が集中している昨今、過疎化が進む地方に人を呼び込み、空き地や古民家を利用してもらおうというのがその狙い。ダーチャという言葉こそ使っていませんが、いま住んでいる場所はそのままに、地方にもうひとつの拠点をもつという意味では、まさしくダーチャ暮らしなのです。
 

ダーチャ暮らしを始めるには!?

ダーチャ暮らしを始めるには、まず物件探しが必要です。地方自治体の「空き家バンク」や田舎暮らし物件専門サイトの情報などを参考に、イメージや予算に合う物件を探してみましょう。選ぶときに大切なのは、「自分はその場所で何をしたいのか」を第一に考えること。それによっては、必ずしも不動産の購入にこだわる必要はないと思います。たとえば、子どもが大きくなるまでの何年かだけ通いたい、という場合は、庭つき古民家を賃貸するという選択もあります。

また、気軽に週末農業を始めたいという場合、全国各地にある「クラインガルテン」と呼ばれる滞在型市民農園を利用するのも手。年間利用料はかかりますが、農園と宿泊小屋がセットで借りられて、農業指導も受けられるので、初心者でも野菜づくりが楽しめます。
 

まとめ

現在、全国の市町村のうち約3分の1が「お試し居住」や「暮らし体験」を行っています。その多くは移住・定住希望者優先ですが、最近では二地域居住希望者を受け入れる自治体も増えてきました。興味のある人はぜひ、各自治体のホームページなどで検索してみてください。まずは数泊だけでも、お試しで「ちょっと暮らし」を体験してみませんか?きっと気分はリフレッシュされ、心身が元気になるはず。もし気に入った場所が見つかれば、最初は無理のない程度に「週末ダーチャ暮らし」を実践してみるのもいいかもしれませんね。

※この記事は2018年2月時点での情報です。
 

記事監修:豊田菜穂子
ライター・翻訳家。NPOダーチャサポート理事。書籍・PR誌などの企画編集・執筆に携わるかたわら、ロシアのダーチャ暮らしを独自に取材し、各種媒体やセミナーにて紹介。著書に『ダーチャですごす緑の週末』(WAVE出版)、『ロシアの大人の部屋』(辰巳出版)、訳書に『夢の事典』(飛鳥新社)など。
ブログ https://blog.goo.ne.jp/kot2jp
NPOダーチャサポート http://dacha-support.com
 
 

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